概要
エリックエバンズの「ドメイン駆動設計」を読む中で、アプリケーション開発に適用する時に感じてきた違和感をまとめてみました。
まだ前半しか読み終えてないので、後半を読んだ際にはまた別のエントリーでまとめようと思います。
レイヤー化アーキテクチャとWebフレームワーク
レイヤー化アーキテクチャ
- プレゼンテーションレイヤー
- アプリケーションレイヤー
- ドメインレイヤー
- インフラレイヤー
大まかにまとめるとアプリケーションは上記の4つのレイヤーに分けられる。
これを一般的なMVC構造を持ったWebフレームワークで考えると
- プレゼンテーションレイヤー (View)
- アプリケーションレイヤー (Controller)
- ドメインレイヤー (Model)
- インフストラクチャ (O/Rマッパー/Queue/ログ etc..)
のように大まかに分けることができると思う。
DDDに則れば、
となり、レイヤーに分けることで、責務を分けて凝集度の高い、柔軟なアプリケーションを開発できる。
Webアプリ開発に置いてレイヤー化が曖昧になってしまうのはなぜか
DDDの古典的名著である本書を読むにあたって、事例等が古く、理解が浅い箇所があったため、精読する中で、一般的に使われているWebFWを念頭に置きながら読み進めていった時にFatControllerやドメインモデル貧血症が発症するのかを考えてました。
理想を言えば全てのエンジニアが本著を読んだ上でアプリケーション開発を進めることができれば、そういった問題も少なくなっていくのではないかとさえ考えていたのですが、開発をしていく中で技術的な負債として溜まっていく課題が生まれる原因を少し考察してみました。
- 開発の質とビジネススピードとのトレードオフなって、開発を優先させて、少なからずSmartUI的な何かを許容しながら開発を進めていた。
- webフレームワークを一番最初に覚えてしまってドメインを考えずに開発を進めていってしまう。
上記2点が自分が考えついたことで、特に後者については、僕自身開発手法や設計手法を知らないまま、エンジニアとしてのキャリアを始めており、WebFW(Laravel/Rails)からアプリケーション開発に入ってしまっているので、ORマッパーが便利過ぎて、Controllerにビジネスロジックをべた書きしたりとかアンチパターンをひたすら繰り返していました。
なぜ厳格にレイヤ分けされていない状態になってしまったのか考えると、Webフレームワークがすでにレイヤー分けされていると考えていて、DDDに基づいたドメインの隔離やレイヤー化を考えなくなってしまっているのではないかと思います。
余談ですが、PHPを使って開発していた頃は、Controllerにビジネスロジックを書くことはアンチパターンだと念頭に置きながら、拙いながらも、責務を分けようとしていたのですが、Railsを使い始めた時にControllerにバリバリActiveRecordを使ったビジネスロジックが書いてあるのを見たときには軽く衝撃を受けたのを覚えています。ActiveRecordは便利で簡潔にデータベースとのやり取りを書けるので、コードとして局所的には見通しが効くものの、DDDの最初の方で提唱しているレイヤー化、ドメインの隔離には反します。
ORマッパーの機能性が高い現在のWebフレームワークでは、こういったControllerにビジネスロジックを書いても、コードの見た目上ある程度見通しが効いてしまうこともレイヤー分けが曖昧になってしまう原因のように感じます。
DDDを読んでいて感じたWebフレームワークにDDDを適用しようとした違和感
書籍に戻ると、この書籍が書かれた時期にはまだWebフレームワークそこまでが一般的ではなかったのではないかと思いました。
WebアプリケーションというよりはATMみたいなGUI操作をともなうGUIアプリケーションの開発が念頭におかれているのだと思います。
読み進めていくうちに少なくとも以下の点については書籍を読みながら理解することができました。
- Webフレームワークを使ったアプリケーションとGUIアプリケーションではレイヤー化アーキテクチャの厳格度合いに差があること
- GUIの方がレイヤー化アーキテクチャには厳格
- DDDでもFWに依存せずに、DDD適用時に必要になるレイヤーはスクラッチで実装すべきだと提唱している。
そして、自分の感じていた違和感の正体はWebフレームワークにおけるMVCをレイヤー化されたアーキテクチャとして理解してしまっていたことだと気づきました。
DDDの中でサンプルとしてあげられているGUIアプリケーションを開発する際に説明されているレイヤー化アーキテクチャが本来的なMVCで責務が分けれている状態で、WebフレームワークにおけるMVCはそれ自体では厳格にレイヤー化されていないんですね。
インフラレイヤーはまとまっているものの、ドメインモデルの作成は開発者の設計に依存するところが大きい。
Webフレームワークだけしか知らないとドメインの隔離とレイヤー化アーキテクチャという大元を見逃してしまう可能性があるということでした。