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Drastically Repeat Yourself !!!!

『エンジニアリング組織論への招待』を読んだ

話題の『エンジニアリング組織論への招待~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』をGWに読みましたので感想をまとめてみます。

感想

話題になっている書籍は読んでみるタイプでざっと通読したあと気になるところを二度読みました。
個人的な感想としては、かなり「確かに」とか「わかるわかる」と何度も頷きながら読み進めてましたし、普段の仕事をしている中で感じていた課題感をうまく解説してくれている書籍で、読んでてすっと内容が頭に入ってくる良い書籍でした。

章立て

内容は実際に書籍を読んでみて欲しいのですが、章立てが以下のようになっています。

  1. 思考のリファクタリング
  2. メンタリングの技術
  3. アジャイルなチームの原理
  4. 学習するチームと不確実性のマネジメント
  5. 技術組織の力学とアーキテクチャ

この中で個人的に印象に残っていたのは1章の内容です。1章でも本当に最初の方で本書を読むに当たっての頭の整理の内容が自分の中では強く頭に残っています。

印象的だった内容

第一章から「リファクタリング」という言葉が使われているとおり

頭の中で発生してしまう無駄なプロセスを削除して、考えるときの指針をもつことで、問題解決に向かって明確に行動出来るように促すもの

と章の頭で説明しています。

この書籍を読んだからと行って、「問題解決能力が爆発的に上がる」とか「不確実性に対する有効なソリューションを得た」ということはありませんが、NEXT ACTIONを明確にできる、というは確かにあると思います。

そもそも、この書籍を読むまで普段の業務中で「あれ?なんかうまく進まないな?」っという漠然とした感覚が湧いてくるし、そういうのが蓄積されると、テンパって思考が停止してしまうことが自分はよくありました。ただ、それがどういう原因なのか、考えてもうまく言語化出来ないことがあったのですが、それが 不確実なものを潰してない、そもそも何が不確実なものかがわかってない し、その 不確実なものと向き合ってない ことって結構多かったなと気づきました。

1章で最初の方で語られている内容は以下の三点が中心です。

  • 論理的思考の盲点
  • 経験主義と仮説思考
  • システム思考

この中で 論理的思考の盲点 については個人的にも共感するところが大きかったです。
何より納得感が大きかったのが、論理的思考って基本的にもてはやされる類のものであるんですが、本書では

他人が介在する問題について、私たちは感情的にならざる得ない生き物

というように、人間が他社とコミュニケーションを取る際にベースが論理的でないということを先に言ってしまっています。その上で

  • 共同作業を行う上で無意識的に感情的になってしまうこと
  • 複数人で問題解決の仕事を行う上で、コミュニケーションの失敗が生まれること
  • ここでの失敗とは
    • 「私はあなたではない」という単純なことを忘れる
    • 自分の事情が全て相手に伝わっているのだという勘違い

を指摘しています。

論理的思考は重要な能力ですが、コミュニケーションの失敗によって、制限されたり、自分の正解は相手にとっての正解でないという前提を忘れてしまうと、途端に論理的なコミュニケーションは破綻する、というそもそものスタート地点を理解しておくって他人と仕事上のコミュニケーションをする上で大事だと思います。

もう一つ、1章で印象に残ったことが 「アンガーマネジメント」 です。

僕は他人に対してアンガーを抱いたことはほぼありません(怒られたことは数知れず...(笑))
そもそも怒るのが苦手、というもありますし、沸点が上がりにくいという性格が起因しているような気もしています。

ただ、もし自分が他者の所為に対して、何か指摘しないといけない、場合によっては叱った上で、うまくコミュニケーションを取って、改善につなげてほしいというときが来た時にどう伝えるのがいいのかわからないなと思っていたんですが、本書に1つの手法としてあった以下の内容は「確かに!」と思わされました。

「怒り」を「悲しみ」として伝える

これはかなり目からウロコでした。自分も怒りをぶつけられるとどうしても自己防衛本能が働いてしまい、相手の意見を素直に受け入れることができないことがたまにありますが、「〇〇をわかってくれなくて(自分が大事にしている価値観がぞんざいに扱われて)悲しい」と、相手の価値観と怒った(悲しみの)原因もセットでコンテキストとして伝えられると、相手を理解できなかった自分に否があると自責で考えることが出来るようになると思います。
(あくまで個人の主観です。)

怒りと悲しみって対極にある感情だと思うんですが、真逆であるということで、相手にとっては怒られると思っていたのに、何故か悲しみ(悔しさ、無念さもあると更に有効?)を伝えられると、そもそもガードが緩んで、何故怒っているのか(悲しんでいるのか)の原因がすっと届くのでは、という仮説は確かに確度が高いように感じますし、自分事で考えてみてもそうだと思います。

当分今の自分のおかれている状況で、他人を怒るなんてことはないと思いますが、1つの手法として覚えておこうと思えるくらいいい内容でした。

まとめ

感想にも記載しましたが、エンジニアとして働いている中で日々疑問に感じていたり、うまくいかないなーって思っていたことをうまく言い得ていて、とても納得感をもって読み進められる書籍でした。
エンジニアだけでなく、エンジニアと業務で関わる方はきっと面白く読めると思います。
また、これから働くというより、ある程度業務をこなしてからの方が頭に入ってきやすいように感じました。
やらないとわからないことはある と考えるタイプなので、エンジニアってこういう生き物、コミュニケーションにはこういう齟齬が生じる、様々な不確実性と日々戦わなければならない、というのはある程度経験(少なくとも1年くらい)してみないと実感として湧いてこないものだと思っています。

プロマネの友人にも薦めましたし、非エンジニアの方である程度業務をこなしたことがある方であれば3->4->1->2->5という風に読み進めるのがいいのでは?と思います。
理由は具体的な手法やユースケースを理解した上で、その大本の議論を見ると良いと思ったからです。
5章を最後に置いたのは、エンジニア的な内容が多かったので5は非エンジニアの方が読むと難しいのでは?と思ったからですが、普通に読めるとも思います。

久しぶりに頭の中が整理されたと実感できるいい本に出会いました。